人材版伊藤レポート

2020年9月に「人材版伊藤レポート」を公表して以降、人材に関する注目度がますます高まる中で、企業の中でも、人的資本に関する課題が認識され始めています。

そのような社会の変化の中で、2020年に経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」が通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれる報告書を公表しました。これは、座長である伊藤邦雄(一橋大学CFO教育研究センター長)の名前に由来します。

「人材版伊藤レポート2.0」は、「人的資本」の重要性を認識するとともに、人的資本経営という変革を、どう具体化し、実践に移していくかを主眼とし、それに有用となるアイディアを提示するものです。

2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)でも、人的資本の情報開示に関する記述が盛り込まれた。人材版伊藤レポート2.0が発表され、人材価値を企業価値の視点から評価しようという流れはさらに強まりそうだ。

「人材版伊藤レポート2.0」のP46「(2) ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得」の中の「工夫1:不足する人材の質に応じた確保戦略の検討」の項目を参照頂きたいですね。検討会の中でも、経営戦略に人材戦略をシンクロさせなくてはいけないということではなく「双方向」であると言う議論が交わされました。

この度、その検討会の報告書に「実践事例集」を追加する形で「人材版伊藤レポート2.0」がまとめられ、「人的資本経営に関する調査 集計結果」とともに公表されました(令和4年5月13日公表)。

経済産業省では、持続的な企業価値の向上に向けて、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかという点について、この「人材版伊藤レポート」が示した内容を深掘りするため、「人的資本経営の実現に向けた検討会」を設置し、議論を重ねてきました。

サービス産業が中心の現代において、人はコストではなく資本であるとの認識が欧米を中心に広まりつつありますが、日本では十分にそうした考え方が広まっておらず、結果として海外の資本家からの評価を得にくい状況が続いていました。企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)推進体制の整備を求めDX銘柄評価の基になった「伊藤レポート」で知られる一橋大学の伊藤邦雄先生らが2020年に公表した「人材版伊藤レポート」は、この遅れを危惧し、経営戦略と連動した人材戦略の実践を求めるものでした。

人材版伊藤レポートでは、「CEO・CHROは、新卒一括採用に限定しない学生採用方針を策定し、学生に開示することで、国内外の留学やギャップイヤーでの自己研鑽(けんさん)等を経た学生の入社を容易にする等、中期的な人材ポートフォリオの充実につながる採用・選考戦略を策定・開示する」とし、企業が学生に対して「人的資本経営」の方針を発信することを求めている。一方、学生の側は「企業の存在意義や事業機会、多様な人材が受け入れられる風土等に、高い関心を持っている」ことも指摘されている。

SDGsを学んだ世代は、就職への意識が大きく変化している世代でもある。「まずは1社目」と、終身雇用ではなく「ジョブ型」の意識をもつ学生も増えている。企業側も、人材版伊藤レポートに指摘されるように、人的資本を意識した経営になればなるほど、採用にも変化が表れる。

この人材版伊藤レポートを受けて開かれた「人的資本経営の実現に向けた検討会」の成果を取りまとめたものが、経済産業省が2022年5月13日に発表した「人材版伊藤レポート2.0」です。

人材版伊藤レポートでは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方として、人的資本経営を提唱しています。

令和2年9月に経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会(座長:伊藤邦雄:一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)」の成果として「人材版伊藤レポート」が公表されました。

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