■NEW TREND 「人的資本経営」
ISO Human Capital Reporting国際標準も含め人的資本についての測定・分析手法や情報開示の基準自体がまだ黎明期にあり、国内の人事にはまだ知名度も低く、人的資本経営への動きはまだ始まったばかり。基準自体も進化の途上にあります。この国際的な動向に対応できないと人事の存在価値も大きく変わってくる可能性もある。また、この分野は財務や社会的責任投資や人的資本を定量的に扱うピープルアナリティクスなど多様な知識を持つ専門家とのコラボレーションが必要なため、現状の認識度合い、取り組みの状況に合わせて、デリケートなテーマも扱えるようなクローズドな分科会や、オープンなセミナー、勉強会など対象層に合わせた普及・啓蒙活動や情報交換の機会を作って行く予定です。
一昨年人的資本報告書に関する国際標準(ISO 30414)が初めて策定され、TC260(Human Capital Management)に関して国際標準を審議する検討部会が活性化して来ております。国内でも金融庁 コーポレートガバナンスコードが改訂により意思決定機構やダイバーシティを含めたガバナンス改革への要求や、経産省 伊藤レポートで「持続的な企業価値の向上と人的資本」の重要性が謳われるなど、真の意味での「人的資本経営」への要請が高まっています。
人的資本経営では、経営戦略と人材戦略の連動が重要となります。
「企業価値に対する非財務的な無形資産の果たす役割が大きくなる中、人材を無形資産の代表である人的資本として捉え直し、その価値を可視化し、高めるために企業が投資すべき」「国内外の機関投資家の関心が強いESG(環境・社会・企業統治)投資という観点から、人的資本投資を企業による社会(S)へのポジティブな影響として捉えるべき」「従業員や投資家との対話のため、企業が人材戦略や人的資本投資の実態を『見える化』し、発信すべき」
人的資本経営の取組みを推進するための工夫として、健康経営への投資とウェルビーイングの視点の取り込むことが挙げられています。
こうした一連の「人的資本経営」を機動的に行うため、その担い手を人事部門から経営陣・取締役会に移行させることも提起されている。
企業の人材戦略を定性的、定量的に明示する人的資本情報の開示は、「ESG投資」との強い関連性を有しています。経営の持続可能性や企業価値を示すうえで、人的資本情報は重要な判断基準に位置付けられたということです。これまで「指標化」、「明示化」できていなかった「人的資本」の可視化により、それを可能にしました。
■NEW TREND 「人的資本経営」
日本において人的資本の可視化が提唱される背景には、世界の動向があります。企業価値における人的資本の重要性への関心が、世界的に高まり続けています。米国においては、2017年には 機関投資家がSEC(米証券取引委員会)に対し、人的資本に関する情報開示の要求を始めました。それより先に、EUにおいては、2014年に EU非財務情報開示指令(NFRD)により、社会と従業員を含む情報開示が義務化されました(500人以上企業対象)。
その後、内閣官房内「新しい資本主義実現会議」のワーキンググループ「非財務情報可視化研究会」において、今夏に向けて情報開示項目の検討が進められている。
同報告書によれば、人材の「材」は「財」であるとされ、人的資本経営というキーワードが再び大きな注目を集めることになります。
ESG投資の文脈から、高まるばかりの投資家からの非財務情報の開示要求や質の高い統合報告書の作成要求。昨年米国証券取引委員会が人的資本に関する報告を義務化したことから、国内でも対応必至の人的資本報告書への対応に加え、持続的な企業価値の向上を実現する人的資本経営のあり方や、ガバナンス改革などについても、コロナ下において海外でもより一層重要性が注目されるピープルアナリティクスの視点から深めてまいります。
共同で運営していくことが決定したため、今後の人的資本経営や人的資本報告書のあり方や、今後の国際標準の策定や普及、今後の動向への対応を共有・検討してまいります。
さらに、人的資本の長期的な投資と活用がきわめて重要な製薬業界では、組織内の人的ネットワークを可視化する組織ネットワーク分析(ONA)25 を実践している事例もあると聞きます。ますます注目されている人的資本を実際に活用するためにも、社会関係資本についても積極的な取り組みや説明をしていくことが求められているのではないでしょうか。
人的資本の管理を支援するためにデータ利活用やピープルアナリティクス技術を活用し、自社の人的資本の実態をどのように可視化し、将来の中長期の経営課題にも人事部門や自部門がどのように貢献できるかについて情報共有や意見交換を行い、将来への準備を進めます。