人的資本を重視した経営は「人的資本経営」と呼ばれます

コロナ禍でリモートワーク・ジョブ型雇用・ワーケーションなどの新しい働き方が広がりをみせるなか、「人的資本経営」というキーワードへの関心が高まっています。

今後は人事部内での改革に留まらず、コーポレート・ガバナンスや金融市場の枠組みのなかで、人事・人材戦略をとらえる流れをつくる、それが「人的資本」を考える大きなポイントです。人を資本として積極的に投資する、そしてその情報を積極的に開示していくことにより、より多くの投資家の関心をひきつけることができ、投資対象に選ばれ、結果として企業価値の向上につなげていくことができるのです。

さらに具体的な内容として、健康的に働ける職場環境の整備、柔軟な働き方の推進、従業員のキャリア自律支援、などが挙げられます。このように、人的資本経営の取り組みでは、経済的な収益性だけでなく、社員の幸福感や健康などの非経済的な利益の獲得に目を向けることとの両立が特徴であるといえるでしょう。

▲引用:「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート ~」

このように、人材や人材戦略に関する情報の積極的な開示、見える化は国が必要であると明言している重要な施策です。talentbookは人的資本経営が叫ばれるようになる以前の2015年10月から、企業の人材に関する情報発信をコンセプトとしたメディアとして在り続けてきましたが、ようやく時代が追いついてきた感触を抱いております。

3つの視点の中でもっとも重視されているのが、経営戦略と人材戦略の連動です。両者の課題には密接なつながりがあり、人的資本経営に不可欠とされています。例えば社内でDXを推進する場合、人材採用や人材育成によるデジタル人材の確保が求められます。経営課題改善のためには、どういった人材戦略を採るべきか、または育成するべきかも併せて考えることが大切です。

我が国でも呼応した動きが確認できる。2020年には経済産業省が「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会報告書―人材版伊藤レポート」*3を公表し、人材戦略を企業の価値創造ストーリーに反映させることの必要性を提言している。さらに2021年には、金融庁・東京証券取引所により「コーポレートガバナンス・コード」が改訂された*4。そこでは、「上場企業は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すともに、その状況を開示すべきである」と言及されている。すなわち、今後は人材戦略と経営戦略との連動状況や当該取組の可視化や開示が投資家などのステークホルダーから求められてくるということである。とりわけ、上場企業においては、投資家から財務データに留まらず、今後の企業成長を見極める上で、いかに人材を資本として捉え活かしていくのか、その説明と対話を求められるであろう。企業や個人を取り巻く変革のスピードが増す中で、目指すべきビジネスモデルや経営戦略と足下の人材及び人材戦略がマッチしているのか、再考する契機にあるのだ。

こうした環境変化のなかで持続的に企業価値を高めていくためには、経営戦略やビジネスモデルを変えるだけではなく、その実現を担う「人」の価値をあらためて認識し、人材戦略をもっと経営に紐づける必要があるのではないかという課題意識がありました。

企業は人なりと言われるが、SDGsやESGが叫ばれる昨今、人的資本経営に経営層、機関投資家からの関心度が高まっている。その契機となったのが、ISOが2018年に制定した人的資本経営開示のガイドラインである国際規格ISO30414*1である。同規格では、ダイバーシティ(多様性)、リーダーシップなど11の領域で58の測定指標を開示のガイドラインとして明示している。また、2020年には米国証券取引委員会において、上場企業に対する人的資本の情報開示の義務化がなされた*2。人材の採用や教育、リテンションなどに関する投資や損失の実態を明らかにしてマネジメントすることが求められ、投資判断の重要な基準となる見込みである。

これからは好き嫌いではなく、できればデータに基づいて、マネージャーとして社内外で活躍するスキルと実力を持ち合わせる人材に昇進してもらう。データとHRテクノロジーを活用して、科学的なアプローチで意思決定ができると、世界標準の「人的資本経営」と言えるのかなと思います。そこを目指すと投資家受けも良くなり、そうした姿勢を持つことで、優秀な人材の獲得に効く強みにもなると思います。

個人の能力を資本として捉える「人的資本」の考え方へ、世界的に関心が高まっています。近年の国内においては、経済産業省が人的資本を研究会の題材とする動きも見られ、今後のビジネスシーンでも重要なキーワードとなりそうです。企業の内部に限らず、ステークホルダーからも重視される傾向にあるため、人的資本を重視した経営へのシフトを視野に入れると良いでしょう。本記事では、人的資本の基礎知識を解説します。人的資本の情報開示が重視される背景や、人的資本経営を推進するコツまでお伝えしますので、ぜひ参考にご一読ください。

今、申し上げた「法定開示」も含めて、「人的資本の開示」がいよいよ日本でも始まりますが、大切なポイントとして申し上げておきたいのが、「人的資本経営」と「人的資本開示」の関係です。

人的資本経営の構成要素5つの中で、今日のタレントマネジメントシステムでできることは「現在」の情報を収集すること、及び「現在」の可視化による業務効率化に限られています。動的人材ポートフォリオに関しては目指す人材ポートフォリオとのギャップを把握する二歩手前の「現在」の人材ポートフォリオに関連するデータ蓄積と可視化はできますので、直近の人材補充を実行するための人材配置や短期的な戦略を実現するための育成の業務効率化に役立てられます。現在の従業員が取得しているスキルや資格、経験を共有することで、社内コミュニケーションの活性化にもつなげることも可能です。

人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を指します。

人的資本を重視した経営は「人的資本経営」と呼ばれます。人的資本経営にも多くの定義がありますが、2022年に国内で政府から発出された「新しい資本主義の実行計画」においてその考え方の根本が見られるといえます。「新しい資本主義」とは、「企業も個人も社会課題の解決と経済的な成長を両立していくこと」だと定義されています。そこにおける人的資本経営は、新しい資本主義で定義された社会課題の解決と経済的な成長を、個別の企業や個人で行っていくことであるといえます。

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