谷保さんも場内アナウンス担当のサブとして放送室に待機
地元で培われた野球への情熱が、谷保さんのウグイス嬢人生を切り開いた。
谷保さんは当時の印象を振り返る。ジュニアオールスターの始球式は地元千葉出身という事で長嶋茂雄氏が務め、華やかにスタート。先発は榎康弘・現ロッテアマチーフスカウト。3回を投げて被安打2、2奪三振、1失点という内容だった。
このジュニアオールスターの翌92年からロッテは川崎から千葉に本拠地を移転。千葉ロッテマリーンズというチーム名で新たなスタートを切った。谷保さんも場内アナウンス担当のサブとして放送室に待機。初めてメインで担当をしたのは4月17日の西武戦。ロッテの先発は小宮山悟氏(現早稲田大学監督)。西武先発は工藤公康氏(現ソフトバンク監督)。試合は延長11回に7番サードでスタメン出場していた初芝清氏(現野球評論家)の左越えの一打でサヨナラ勝ちとなる。マリンデビューとなった谷保さんにとっても忘れられない思い出の試合だ。
ロッテが本拠地を置く1年前の事。移転に向けた予行練習のような意味合いもあり、ロッテの球団スタッフがジュニアオールスターの運営の中心を担うことになった。そして谷保さんはこの時、マリンの放送室に初めて足を踏み入れた。
プロ野球・ロッテには、言わずと知れた名ウグイス嬢がいる。91年から球場アナウンスを担当する谷保恵美さんは、今季で“現役30年目”を迎える。昨年7月には担当試合が1800試合を突破。96年10月以降、連続担当を継続中の鉄人でもある。谷保さんにとって待ちに待った節目のシーズン開幕となる23日のオリックス戦(ZOZOマリン)を前に、これまでの歩み、独特のコールが作られた経緯などを語ってくれた。
「注目の試合だったので、不安しかなかったのですが、オールイースタンの先発投手がロッテの榎康弘投手になり、榎選手も緊張するだろうな。自分も頑張ろうと、なんだか心強い思いになった事を思い出します。そして始球式が長嶋茂雄さんと事前にお聞きして、お名前を呼べるなんてなんて光栄なんだろうと感激しまして、お名前を呼ぶ練習を何度もしました。本当に『心臓が飛び出るかと思った』というのは私にはあの試合の時のことでした」と谷保さん。ちなみにプロ1年目の榎氏もマリン初マウンドでその後、引退までマリンで6勝を挙げることになる。現役引退をした後の05年に広報として谷保さんと同じ部署で働きチームの日本一を支えることになるというのもなにかの縁だ。