[MARKOVE] 海外に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが懸念されている日本。デジタルマーケティングの世界を先導するデロイト デジタルとアドビは、日本企業のDXの課題をどう見ているのか。 日本企業の「本当のデジタル化」はこれから  コロナ禍において日本企業はDXの必要性を強く認識し、取り組んできた。しかし、特にマーケティング・セールス領域のDXにおいて、世界と比べて日本は後れを取っているのが現状だ。日本企業のデジタル化は先進的な米国などと比べて7年遅いとの声もある。 「進まないデジタル化は日本企業の低い成長性に表れています。デジタルマーケティングの先進企業がいる地点をステージ4とするなら、日本企業の多くはステージ1か2で足踏みしているという印象です」 企業が巻き込まれる“デジタル大渋滞”が発生中  どの企業もDXやデジタル化の必要性を認識し、多額の投資をしてデジタルマーケティングに取り組んでいる。しかし、仕組みを整えただけでは競合との差別化を実現することは難しいという。 「今は多くの企業がデジタル領域に進出し、例えばウェブサイトやアプリをつくり、SNSを運用しているため、“デジタル大渋滞”が発生しています。その結果、デジタル情報やサービスが氾濫し、ユーザーにとっての大事な情報や体験を届けられなくなっている。ですからデータを活用してサービスの付加価値を高めたり、クリエイティブをより高度化することが、次の主戦場となります」(熊見氏)  デジタルマーケティングを推進する上で、熊見氏が最も重要なキーワードとしているのは「パーパス(存在意義)」だ。デロイトが毎年発表している『Global Marketing Trends』の2022年版の中でも、パーパスは世界の経営者が重視している要素の第1位に挙げられている。 「品質や価格だけでは競合との差別化をしにくくなっている中、顧客に振り向いてもらうには、自分たちのパーパスを明確にし、顧客や従業員、パートナーなどに向けて発信しブランディングすることや、パーパスに基づいたサービス・体験提供に選択と集中していく必要があります。その実現のためには最高品質のコミュニケーションを実践することが1丁目1番地となります。しなければデジタル大渋滞に巻き込まれ、パーパスの浸透・徹底ができないのです」(熊見氏) デジタルとリアルのハイブリッド体験を実現するために  また、店舗などリアル接点の活用も重要なポイントとなる。日本では国土が広い米国などと違い、顧客と実際に接する場面が多い。店舗以外にも営業や販売担当とのリアルなコンタクトを生かしたビジネスを展開する企業が多いのだが、そのような企業がデジタルネイティブ企業と戦うには、リアルのアセット(資源)を駆使した戦略が必要だ。  リアルの世界でもデジタルの技術を使いながら、リアルタイムにコミュニケーションする。そういったハイブリッドな顧客体験の提供が求められるのだ。  例えば、ユーザーがあるショッピングモールに買い物に行く。施設内でスマートフォンアプリを立ち上げると、イベントの案内やクーポンが提示される。施設内の店舗で買い物をすると、その情報に基づいて、自分だけの他店のお薦め商品を案内される。歩き疲れた頃には、最寄りの休憩スペースと座席の空き状況が提示される……。まさに人に優しく、かつ便利なハイブリッド空間だ。  このようなデジタルとリアルが融合したハイブリッドな世界を思い描くことはできても、いざ実装するにはハードルが高いように思える。デジタルとリアルの多様なデータを統合し、個別ユーザーごとの情報をカスタマイズし、タイムリーにコミュニケーションを取る必要があるからだ。しかし熊見氏は、「Adobe Experience Cloud」などのソリューションを使えば、このような顧客体験の構築も実は全く難しくないと語る。  「当社はコンサルティング会社ですから、新しい世界観の構築や高度な設計図の作成をまず得意とします。そして近年では多数のエンジニアによりDX実装もEndToEnd(戦略から開発、その後のビジネス/システム伴走まで一貫した対応)で可能です。それを現実においてスピーディに、世界最高レベルで実装するには、こうした完成されたソリューションが欠かせません」(熊見氏)  アドビのパートナー営業部執行役員本部長の長岡昌吾氏も同様の見解を示している。 「熊見さんの言うようなDXを実現するには、企業が持つ多様なチャネルのデータを統合すること以外に、さまざまな要素が必要になります。経営戦略の立案はもちろん、システムをどうするか、運用はどうするか、クリエイティブは……。これら全てを企業がインハウスで賄うのは難しいといえます。しかし、デロイト デジタルさんとアドビのパートナーシップなら、こうしたニーズに対しても一貫したサポートを行えます」 2021年にデロイトが「インターナショナルでアドビのトップパートナー」に認定  デロイトとアドビは、25年以上も前からパートナーシップを築き、協力しながら顧客のビジネスを支援してきた。1994年、コンサルティングやビジネスパートナーとして、デロイトがアドビの推奨サプライヤーとなったあたりから両社の関係がスタート。アドビの事業・企業買収をデロイトが支援したこともあった。  12年にデロイトは、監査や税務、コンサルティングなどの機能別にバラバラになっていたウェブサイトをアドビ製品ベースで統合。「Deloitte.com」として一つにまとめたことで、デロイトブランドが一気に高まるきっかけとなった。  デロイトはアドビ製品を顧客に提供するパートナーとしても活躍し、多数の賞も受けている。両社はお互いに、“サプライヤー” “顧客” “パートナー”というさまざまな顔で密接なコラボレーションを続けている。  現在はデロイト デジタルを中心に、アドビ認定資格を持つ従業員も1500人を数え、全体で1万人以上がアドビ製品の提供に携わっている。21年には「DIGITAL EXPERIENCE PARTNER OF THE YEAR INTERNATIONAL」を受賞。インターナショナルでアドビの「トップパートナーに認定」されたことになる。  またデロイトは、ガートナー社により8年連続グローバルリーダーに選出されるなど、マーケティング・セールスやカスタマー領域において多数の評価を受けている。一方アドビは、業界アナリストにより、ウェブコンテンツマネジメント、デジタルコマースなど23のカテゴリーにおいてリーダーとして選出されている。  お互いの強み、つまりデロイト デジタルの強力なビジネスコンサルティング力と、アドビの持つ最高レベルのテクノロジーの融合が、世界最高レベルのデジタルマーケティングの提供を可能にするといえる。 デロイトとアドビの25年にわたるパートナーシップ グローバル展開のサポートに大きな強み 「グローバルで、アドビとこれほど大規模かつ密接な関係にあるパートナーはデロイトさんの他にいません。オフショア開発を行うなど、海外に持つケイパビリティー(組織力や強み)をうまく活用しているところがデロイトさんの特徴です」(長岡氏)  デジタルマーケティングは、戦略だけ立案しても実現できないし、テクノロジーだけ導入しても効果は出ない。その両方を高いレベルで実行する必要がある。特にグローバルで展開する企業がデジタルマーケティングで成果を出そうとする際、2社のグローバルレベルでのサポート体制が強みとなる。 「日本のお客さまが海外に出て行きたいというとき、グローバルチームを持つ当社に声が掛かります。必然的にアドビさんとの協業では、グローバル企業の案件が多くなります」(熊見氏)  デロイトでは、ケイパビリティーの重要な要素である人材の育成にも力を注いでいる。ビジネスコンサルティング、エンジニアリング、クリエイティブの三つの領域で人材の獲得・育成を強化。今年1月には南米にある従業員1000人ほどのクリエイティブコンテンツ制作会社を買収した。国内の人材を海外で活躍させるなど、人材の国際化にも今後は取り組んでいくという。 最高レベルのデジタルマーケティングでDXを実現  両社の強力なパートナーシップは、今後どのような方向性に進んでいくのか。熊見氏はこう語る。 「デロイト デジタルでは、『世界が嫉妬するような企業を日本から創る』を標榜しています。ビジネスコンサルティングによる勝ち筋を導出し、その勝ち筋を最高のテクノロジープラットフォームで実現する。さらにそのプラットフォーム上で生かされるデータやコンテンツのクリエーションまで踏み込み、マーケティングに伴走しながら、本当の成功にまでコミットするのがデロイト×アドビ流です。最高レベルのデジタルマーケティングを実現し、世界に向けて勝負したい企業の皆さまを支援していきたいです」  一方、アドビの長岡氏も、両社の協業をますます加速させていく考えだ。 「デロイトさんの持つメソドロジー――未来のマーケティングを考える、データに基づいたインサイト、人の心に訴えるクリエイティブと、アドビが提供するAdobe Experience Cloudは非常に相性が良いのです。日本企業の未来を考えたときに、DXは避けては通れない課題です。その課題をデロイトさんと共に解決していきます」  収まらないパンデミックや、円安、国際情勢の悪化、人手不足など、依然として厳しい経済環境が続いている。デロイト×アドビのパートナーシップによるDXの実現が、日本企業の未来を照らす光明となるはずだ。 [/MARKOVE]
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