ボーマン嚢内圧

ボーマン嚢内圧

腎臓に広く分布する糸球体から1分間に濾過されて尿細管に出る濾液の量を「糸球体濾過量」といい、腎臓の機能を表す一つの指標となっている。糸球体濾過量の値は1分間に男子で110ミリリットル、女子で100ミリリットル程度である。腎小体における濾過の決定要因としての相対的圧力に関与するのは、血圧、ボーマン嚢の内圧、および血漿の膠質(こうしつ)浸透圧である。なお、ここでいう血圧とは輸入細動脈の血圧と輸出細動脈の血圧との差であり、通常は約70ミリメートル水銀柱である。また、ボーマン嚢の内圧は条件によりいろいろに変化するが、平均約20ミリメートル水銀柱、血漿の膠質浸透圧は約20ミリメートル水銀柱である。濾過の原動力となる濾過圧は、血圧からボーマン嚢の内圧および膠質浸透圧を差し引いた値として求めることができる。したがって、濾過圧は通常70-(20+20)、すなわち30ミリメートル水銀柱程度となる。なお、糸球体における濾過においては、次のような現象が認められる。(1)糸球体毛細血管の血圧または血流量が増加すれば、糸球体濾過量は増加する。(2)糸球体の血圧は輸入細動脈の収縮によって低下し、輸出細動脈の収縮によって上昇する。(3)輸入細動脈の平滑筋は交感神経刺激により、あるいは大量のアドレナリンによって収縮し、カフェインなどによって拡張するが、拡張すると糸球体血圧は上昇し、糸球体の濾過量が増すので尿量は増加する。(4)輸出細動脈はレニン、ヒスタミン、少量のアドレナリンによって収縮するので、この場合も糸球体血圧が上昇し、尿量は増加する。

腎小体において濾過される糸球体濾液は1日に約160リットルにも達する。この糸球体濾液の成分は血漿からタンパク質のみを除いたものに等しく、その中には各種のイオン、ブドウ糖、アミノ酸など利用価値のあるものも多量に含まれているため、これをそのまま尿として排泄してしまったのでは非常な浪費となる。さらに毎日160リットルもの尿を排泄するとしたならば、それに等しい量の水を飲まなくてはならず、1日が水を飲むこととトイレに通うことだけで終わってしまうことになる。このようなむだを防ぐために、糸球体濾液がボーマン嚢に続く尿細管・集合管を流れ下る間に、ある物質は再吸収され、またある物質は血液から分泌されて最終的には尿となって排泄される。さらに、尿細管・集合管の周囲を糸球体からの輸出細動脈がふたたび毛細血管となって取り囲むため、尿細管・集合管との間で物質の再吸収・分泌が行われる。近位曲尿細管ではナトリウム、カリウムなどの電解質、ブドウ糖、フルクトース、アミノ酸、アスコルビン酸、尿素などが再吸収され、これに伴って水の大部分が受動的に再吸収される。一方、パラアミノ馬尿酸、ペニシリンなどの異物やクレアチニンなどは分泌される。こうした尿細管における再吸収・分泌は、単なる濃度勾配(こうばい)にしたがって物質が移動する受動的なものばかりではなく、尿細管の細胞が積極的にエネルギーを消費して濃度勾配に逆らって特定の物質を移動させる場合も多い。後者のような物質の移動を能動輸送という。たとえばヘンレ係蹄の太い上行脚では塩素が能動輸送によって再吸収される。また遠位曲尿細管ではナトリウム、重炭酸イオン、および水が再吸収され、カリウム、水素、アンモニアなどが分泌される。

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