継続することによってこそ 不耕起栽培の真価が発揮されるのです
アメリカでは、大豆栽培面積のおよそ30%で土壌侵食を防止するために不耕起栽培がおこなわれている。この不耕起栽培は、2つの方式があり、アメリカでは、雑草は畑の耕起はなしで直接細い溝状に種まき機で種をまく、雑草は除草剤で防除して、除草耐性遺伝子組替作物と有機農法を組合せの大規模農業が主流であり、不耕起による土壌流失・肥料流失削減、トラクターの燃料費やCO2削減に効果があると言う。一方日本では実施率5%程度だが、無農薬・無化成肥料・雑草等の有機栽培を行う自然循環型農業であり主に小規模農業に用いる。作物も雑草も全て根は土壌に残したままで、収穫や雑草取りは根本付近から切断し土壌表面にのせたままで有機肥料とする。私も家庭菜園で、無化学肥料の自然循環型農業の不耕起栽培に取り組んでみたいと思う。
不耕起栽培とは、「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法」と定義されています。不耕起栽培は耕起栽培に比べて、作業時間が短縮でき、省エネルギー的であるなどの長所があり、しかも畑地に生息するミミズ、ヤスデ、クモなどの土壌動物群集が豊かになります。いっぽう、初期生育の遅れや減収などの短所も指摘されています。
『不耕起栽培のすすめ』では、不耕起栽培の特徴は「地力を維持する」効果であり、地力を高める働きは弱い、とあります。そのため地力が低い圃場で不耕起栽培を続けても、農作物の生育はよくなりません。不耕起栽培に取り組むためには、不耕起栽培に適した土を作るという事前準備が必要です。
一般に行われている耕起栽培では、耕耘によって作土層を画一化することで多様な自然のしくみやはたらきを「見えない状態」にしています。まず、小面積から不耕起栽培を実施し、土壌物理性(土壌の団粒化、水はけなど)の変化やそこで生活する土壌動物をとおして、畑に本来そなわっているはたらきが実感として「見える状態」になることが大切です。そして、それを観察(自然のしくみを読み解く努力)する栽培者によって、初めて「土の力」が認識されるのです。
作物を栽培するうえで、必ずしも不耕起栽培が良いとは限りません。耕起法はあくまで手段であり、年々変化する土壌の状態を観察しながら、栽培作物や土壌条件にあった方法を探ることが大切です。
これまでの常識を疑い、農業のあり方を考えなおすことで、日本の気候風土にあった不耕起栽培が大きく発展する時が近いのかもしれません。ようやくこれから、日本で自然に則した農法を探究し取り組んでこられた方々の「不耕起で雑草を味方として活かす」という知恵や技術が参考になるかもしれません。
不耕起栽培は1943年にアメリカのエドワード・フォークナーは『農夫の愚行』で、農業で長年実施されていた耕作(耕起)は、土壌を破壊して何の意味がない、表土を雑草などの有機物を混ぜ込むだけで、肥沃な土壌が期待できるとした。
すなわち、耕耘のたびに土壌環境が更新される耕起栽培とは異なり、不耕起栽培ではその年の管理が次年以降にも影響し、安易に効率化できない「生物による時間の蓄積」がみられます。継続することによってこそ、不耕起栽培の真価が発揮されるのです。
こうした研究や、除草剤耐性遺伝子組み換え作物の開発や有機農法の手法の確立とともに、完全な不耕起栽培や、保全耕転と呼ばれる土壌の表面のうち、少なくとも30パーセントを作物の残渣で覆っておく緩やかな手法が、北アメリカの農家の間で急速に広まっている。1960年代には北米の耕地のほとんどは耕起されていたが、カナダでは1991年には33パーセント、2001年には60パーセントの農場が不耕起栽培もしくは保全耕転を採用している。アメリカ合衆国では2004年に保全耕転が全農地の41パーセント、不耕起栽培が23パーセントで実施されている[3]。しかし、地球全体の農地のうち、不耕起栽培が行われているのは、5パーセントほどに過ぎない。
地力が低い圃場には堆肥や緑肥作物を鋤き込み、地力を高めましょう。3〜5年かけて地力を高め、不耕起栽培に転換した後も、数年間は有機物を地表面に多めに敷いたり、緑肥作物の種をうね間にまくなどして、地力向上のための土づくりを続けます。
土壌を耕耘すると、有機物や肥料が土壌とかき混ぜられ、土壌微生物と有機物や肥料の接触面が増加することで、養分の無機化(窒素の硝化など)が促進されます。また、作物の根も伸びやすいため、不耕起処理に比べて、耕起処理で生育・収量が勝ります。 しかし、不耕起栽培を継続すると、年々収量が増加しました(図2)。これは年々蓄積される有機物(養分)が、年々豊かになる土壌生物のはたらきによって、作物が利用しやすい状態になるためです。しかも、作物の利用量が増加したときには養分の無機化が進み、利用量が低下したときには、余剰の養分を土壌生物が利用することによって再び有機化が進んで、養分の微調整が可能な土壌環境になります。したがって、作物の養分過多による病害虫の発生が抑制されるとともに、品質も向上します。
不耕起栽培の継続によって、作物残渣などの有機物が土壌表面に集積され、有機物に富んだ層が形成されました。この有機物の集積層は、土壌生物の餌であり住みかとなります。そして、細菌、糸状菌、原生動物など顕微鏡でなければ見ることができない生物からミミズ、ヤスデ、クモなど肉眼で見ることができる動物まで多種多様な土壌生物が増加します。これらの土壌生物が生活することで、有機物の分解や土壌の団粒化が進みます。そして、植物(作物)が生育しやすい環境に土壌が改善されます。
不耕起栽培(ふこうきさいばい、英語:Nontillage cultivation, No-till farming)とは、農地を耕さないで作物を栽培する、作物の栽培方法の一つ。