金融教育の大きな流れを「トラブル回避から資産形成へ」と表現する
まずは金融教育を軸とした、キャリア教育などへの発展です。金融教育・投資に関する教育を行うとなると、どういうアプローチをすればいいか、悩むケースもあると考えられますが、企業分析を取り扱うことで幅が広がるのではないかと考えます。企業分析をする際は、ニュース収集や決算資料などを用いて企業に関する調査を行います。この取り組みは、あまり学生には馴染みのない企業・社会と繋がる一歩目になり、キャリア教育にも繋がっていくと考えます。
これまでは、家庭科における金融教育の取り上げられ方について見てきました。ここでは、今後の家庭科、並びに若年層の金融リテラシー向上に関して、個人的に期待していきたい取り組みについて2点お話しします。
その一方で、「金融教育の授業をどの科目の先生が担当するべきか」という質問に対して全体の55.9%が「外部の講師」が担当したほうがよいと回答し、現実的に担当する可能性の高い「家庭科の先生」が担当すべきと回答したのは3.4%に留まりました。教科書に準ずる内容以上に、専門家による実践的な知識が求められていることの表れと言えるのではないでしょうか。
消費者教育の義務化においても現在の金融教育と同じような状況が家庭科で起こったことは記憶に新しいところだと思います。「おとなドリル」は、18歳になると何ができ何ができないのか、契約とは何か、気を付けたい悪質商法などについて、マンガやイラストを豊富に用い楽しく学習できる家庭科の副教材として20万人以上の高校生に使われたヒット教材です。
最近の家庭科教育の話題の中心といえば「18歳成人」と「金融教育」です。教育界のみならず一般のメディアでもしばしば取り上げられるようになりました。
2022年4月の学習指導要領改訂が後押しとなり、文科省や金融機関による金融教育支援はこれまで以上に活性化するのではないでしょうか。その一方で、現場で参考にできる事例やノウハウはまだ多くは共有されておらず、各校とも模索しながら取り組む状況が当面は続きそうです。
金融教育が学校の授業に取り入れられるというのは金融の文脈では歴史的な転換点といえるでしょう。一過性の話題で終わることなく、継続的なアップデートを伴ってより良い教育プログラムへと発展することに期待します。
先進的な取り組みを共有している学校や先生と連携しながら、オンラインで入手できる情報やツールを活用し、ベストウェイを見出していきたいですね。国際教育ナビでも、引き続き金融教育に関する情報やアイデアを共有してまいりますのでどうぞご期待ください。「こんな情報が欲しい」「こんなことに困っている」など、皆様からのご意見もお待ちしております。
初年度ということもあり、各社の教科書を見ても、金融教育の範囲は紙面で1ページにいかない程度で、従来の報道と比較すると、やや少ないかなという印象も持ちます。また、金融リテラシーの項目の最後、「外部の知見の適切な活用」にまではまだ踏み込めていないため、今後はどこまで金融教育の文脈のコンテンツが強化され、内容の網羅が進むかがポイントであると僕は考えています。
2022年4月の学習指導要領改訂で「資産運用」を学び始める!?
これを受け、学習指導要領の中身を教育現場に説明する「学習指導要領解説」には、家庭科で「預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする」との記述が盛り込まれた。家計や経済の仕組みを勉強するだけでなく、「人生100年時代」と言われる中で生徒がお金とどう付き合っていくかを考えてもらうのが狙いだ。
金融教育の動画はこれまでに6本制作され、今後も「クレジットカードの仕組み」などをテーマに、増やしていくということです。
また、成人引き下げに伴い、18歳から親の同意なく証券口座も開設できるようになりました。その観点でも、早期の金融教育の必要度は上がっていると考えます。投資というと、どれだけ儲けを出せるか、に関心がいきがちですが、各商品がどのようなリスク・リターンなのか、という知識を持つことも守りの意味で重要です。適切な知識をつけることは不適切な投資勧誘などからも身を守るきっかけになるでしょう。
金融庁も新指導要領による金融教育の充実を歓迎し、金融教育担当者は「限られた授業時間に資産形成を入れていただいた」と評価。金融教育の大きな流れを「トラブル回避から資産形成へ」と表現する。お金を守り、だまされないというだけでなく、将来の生活を見据えた資産形成を促す方向にあるということだ。
日本証券業協会と全国の証券取引所、投資信託協会が参加している「証券知識普及プロジェクト」では、先生向け金融経済教育支援サイト「金融経済ナビ」を運営しています。授業に活用できる動画教材、また新学習指導要領に対応した公共・家庭基礎の学習指導案も公開しているので、授業計画を立てる際に利用してみてはいかがでしょうか。