それだけ重要視される金融教育
——生徒たちの反応も踏まえて、今後学校の金融教育でもっと伝えていきたいことはありますか?
「家庭科には金融教育のほかに、食生活や衣生活に関わる実習などの実践的な学習もありますし、保育園や高齢者施設に行って子どもや高齢者と関わるような体験的な交流の学習もあり、学ぶ内容は多岐にわたります。
そのための工夫として、金融教育の授業では、最初と最後に必ず「お金は自分の望む生き方や幸せ《well-being》を実現するためのもの」と伝えたり、面白おかしく学ぶきっかけ作りとして「うんこお金ドリル」のリリースなども行ったところです。
欧米と比べて遅れているともいわれる日本の金融教育ですが、今回の学習指導要領改訂により少しずつ若者がお金について学ぶ機会が増えるのではないでしょうか。
それだけ重要視される金融教育。しかしながら全体のおよそ75%の高校では、その内容を教える家庭科の授業は1年間(2単位)しかないと推測されています。1週間で2時間の授業で、年間では70時間程度。
税金にフォーカスすることで、金融教育をもっと科目横断的な学びにすることもできるのではないかと考えています。
中村:税金はもちろん、お金をもっとポジティブにとらえられるような在り方ももっと考えていきたいですね。学校の金融教育のなかで、投資詐欺や金融トラブルの話もするのですが、そこだけが強烈な印象に残り「お金は怖い」「投資は避けたほうがいいのかも」ととらえられ、歯がゆい思いをすることもあります。お金の話をすることは、あまり行儀がよくないと思われる部分もありますよね。
リクルートが提供する進路情報メディア「スタディサプリ進路」が2022年2月に行った調査では「子どもから『投資って何?』と聞かれた時、どの程度説明できるか」という質問に対し、保護者の3人に1人が「説明できない」と回答しました。金融教育が当たり前になっていく中で、子どもからお金について質問をされたときに自信をもって答えられるよう、私たち大人もお金についてアンテナ高く学び続けることが求められています。
『使う』『貯める』『借りる』そして今回新しく追加した『増やす(資産形成)』も含めた金融教育に充てられる時間は、70時間のうち6〜8時間程度ではないでしょうか」
——金融教育の授業を受ける生徒たちは、どのような反応を示していますか?
——金融庁では、小中高と多くの学校で金融教育のプログラムを実施されています。それぞれどのようなことをされているのでしょうか?
中学校では、家計管理などに関する金融教育のほか、トラブルに遭わないための知識を身に付けるための消費者教育も行っています。契約の基本やキャッシング・リボ払いの注意点、多重債務などについても扱っています。
田内:税金についてもっと掘り下げて扱っていきたいですね。とある全国紙で金融の有識者に「金融教育で何を教えるべきか」アンケートを行った際に、1位となったのも税金でした。